養育費の算出基準について

2019/12/26 │ 新着情報
離婚訴訟などで広く使われている養育費の算出基準について、最高裁の司法研修所が今よりも受取額が増える方向で、新たな基準を策定する方針を固めた。2003年に示された現行基準には「金額が低く、母子家庭の貧困の原因になっている」との批判が強く、社会情勢に合わせた改定を行うことにした。12月23日に詳細を公表する。
 

「算定表」

現在は、東京と大阪の裁判官6人が03年に法律雑誌で発表したものが「算定表」として長く実務で使われている。夫婦の収入、子の人数や年齢に応じて機械的に計算できる。例えば、養育費を支払う夫の年収が450万円、15歳の子を養う妻の年収が100万円なら、1カ月あたり「4万円超6万円以下」となる。
 

 家裁

家裁では、この額をもとに他の事情も考慮して養育費を決めるが、生活を維持するには不十分なケースも多く、「母子家庭の貧困の一因になっている」との批判があった。日本弁護士連合会は16年、現行の1・5倍程度に引き上げる内容の新たな算定方式を独自に公表し、改善を求めた。
 
 新しい基準は、最高裁の司法研修所が裁判官4人に委託し、昨年7月から研究させてきた。新基準公表後は、家裁が実務で利用することになりそうだ。増額方向の改定となるが、裁判所関係者によると、年収などによっては現状と変わらない場合もあるとみられる。
 
 すでに調停などで合意した夫婦が、新基準の適用を求めることも予想される。再度の調停も申し立てられるが、認められるかは個別の判断となる見通しだ。
 
 離婚する夫婦は年間20万組ほど。国が3年に1度調べるひとり親世帯の貧困率は15年、半数超の50・8%に上った。司法統計によると、全国の家裁での調停や審判で昨年、養育費を支払うことを決めた件数は約3万1千件。毎月の支払額は2万円超4万円以下が約1万件(33%)と最多で、1万円超2万円以下が約5500件(18%)、4万円超6万円以下が約4700件(15%)だった。
 

〈養育費〉

離婚や別居に伴い、子を育てる親に他方の親が支払う。夫婦で合意できなかった場合、家裁の調停や審判で決める。算定方法を定めた法令はなく、夫婦の収入や子の人数、年齢をはじめ、様々な事情を考慮して、適正な額やいつまで支払うかを決める。支払われなければ、法的には強制執行も可能だが、手続きの複雑さなどから実際には泣き寝入りするケースが多い。2016年に厚生労働省が公表した調査結果では、母子世帯の71・4%が養育費を受け取っていないと回答。母子世帯の平均年収(348万円)は児童がいる世帯全体の半分以下だった。このため、兵庫県明石市は不払いの親の給与を代行して差し押さえたり、反則金を科したりする全国初の対策を打ち出した。今年5月に成立した改正民事執行法では、相手の預貯金や勤務先などの情報を金融機関や公的機関から入手できるようになった。
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