ストーカー行為の規制

2021/02/01 │ 新着情報

ストーカー行為の規制のあり方を議論してきた警察庁の有識者検討会は、GPS機器で被害者の位置情報を無断で取得する行為や、手紙など文書を連続して送る行為を新たにストーカー規制法の対象にすべきだとする報告書をまとめた。警察庁が28日公表した。同庁はこれを踏まえ、同法改正案を今国会に提出する方針。

 警察は!

GPS機器を相手の車などに取り付けて居場所をつかむ行為が、ストーカー規制法が禁じる「見張り」にあたるとして摘発を続けてきた。しかし、最高裁が昨年7月、離れた場所でGPSによる位置情報を取得しても、現行法で規制する「住居などの付近での見張り」にあたらないと判断。法改正に向け、10月に検討会が設置された。

 報告書は、承諾なしにGPSで位置情報を取得する行為は相手に不安をもたらし、さらなる犯罪などに発展するおそれがあるとして、同法が禁じる「つきまとい等」に位置づけるよう提言。機器を相手の車などに取り付けたり、持ち物に忍ばせたりする行為も規制対象にすべきだとした。被害者のスマートフォンにGPS機能付きアプリをインストールするなどして位置情報を得る行為も禁止するよう求めた。

 手紙などの文書を連続して送付する行為も規制対象にするよう提言した。ストーカー行為を規制する場所の対象も広げる。現在は被害者の住居や勤務先、学校などに限っているが、「現に所在する場所」も追加する。

 また、行為を繰り返すおそれがある加害者に出す禁止命令は、住居への送達や公示でも効果を生じさせるようにすべきだと提言した。加害者が受け取りを拒んだり、所在が分からなくなったりするケースがあるためだ。

ストーカー規制法は

1999年に埼玉県桶川市で被害に遭っていた女子大学生が殺害された事件をきっかけに、00年に制定。13、16年に改正された。検討会は法律が専門の学者らで構成し、桶川事件の被害者の父の猪野憲一さんも委員を務めた。猪野さんは「規制対象の追加の方向性を取りまとめた意義は大きく、被害者の声に十分寄り添えたと思う」などとコメントした。(田内康介)

 ■「抑止効果に期待」

 「GPS機器などを使って、どこにいるかを加害者に知られるというのは被害者に大きな不安を与えるため、法律で明確に規制するのは意味がある」

 有識者検討会の委員の一人として参加したNPO法人「ヒューマニティ」(東京)理事長の小早川明子さんはこう評価する。約20年にわたってストーカーの被害者や加害者と向き合ってきた。ストーカーの様態や手口は年々、多様化してきているという。

 相談を受けたある女性のケースでは、墓参りや祭りなどで元交際相手の男とばったり会うことが多くなり、不審に思って調べてみると、車にGPS機器がつけられていた。このケース以外にもGPS機器などの悪用が推測される事例は多く、「機器などの取り付け行為も法規制すれば、さらに抑止効果が期待できる」と話す。

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